2012年5月22日火曜日

面会交渉の決め方

改正された民法766条により、親と子供との面会交流が子の監護について必要な事項であることが明記されたことは前に説明したとおりです。

1 それでは面会交流に関する事項はどのように決めるのでしょうか。
 ①協議離婚の際に当事者の話合いで決める。
これが一番簡単な決め方ですが、口約束がほとんどですし、仮に文書が作成されたとしても、履 行を確保することは難しいでしょう。

 ② 調停で決める。
離婚調停や面会交流を求める調停において合意ができると調停調書が作成されます。調停調書については、後述のとおり履行確保の手段がありますので比較的安心です。調停で決める場合には、例えば「1か月に1回程度」というように面会の頻度は定められますが、具体的な面会方法については、「子供の福祉を考慮し、当事者が協議して定める」というように抽象的な記載になってしまいます。それは、面会の時期、方法は事前に一律に決めることが事実上不可能だからです。その結果、面会交渉が約束通り履行されないことが少なからず発生します。

 ③ 審判で決める。
話合いや調停で決まらない場合には、家庭裁判所に審判を求めることになります。調停が不成立になった場合には、自動的に審判に移行します。裁判所の審判も基本的には、調停と同じような条項となりますので、履行されない危険性があることは調停と同じです。


2 履行確保
子供を引き取った親は、元配偶者に子供を会わせることには消極的です。子供を取られてしまうのではないかという不安、子供に心理的な悪影響を与えるのではないかという不安、手続の煩雑さなどの要因が影響し、面会交流の約束を守らないケースが少なくないのが実情です。その場合、面会できない親には次のような法的対応が考えられます。
 ① 履行勧告
家庭裁判所に義務の履行を勧告するように申出をすることができます。これはあくまでも勧告ですので強制力はありません。相手が勧告に従わない場合には、次の間接強制を求めることになります。
 ② 間接強制
間接強制というのは、相手方が義務を履行しない場合、一定額の支払いを義務付ける強制執行の一形態であり、面会を直接強制することはできません。結局、相手方がとことん面会を拒む場合には、面会することができないことになります。これは子供に会うわせるという身分上の行為を直接強制することは基本的人権を損なう恐れがあるという考え方に基づくものです。
 ③ 慰謝料請求
面会交流できないことによって被った精神的被害について損害賠償を請求することが可能です。面接強制と同様、一定の金銭の支払いを求めることで面会交流させるように相手方に促す効果があります。





2012年5月11日金曜日

面会(面接)交渉に関する民法改正


離婚後に親権者とならなかった親が子供と会って交流することを面会(面接)交流といいます。

これまで面会交流は、明文規定がないまま、民法766条の子の監護に関する事項として認められてきましたが、明文規定の必要性がかねてから言われていたことから、平成24年4月に施行された新しい民法766条によって明文化されました。

その内容は、次のとおりです。
「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」


但し、この改正は従来実務上認められていた面会交流を確認したという性質が強く、面会交渉の具体的内容は従来の解釈により決めることになると考えられます。


祖父母の面会交流
改正法により明確になったのは、面会交流の申立てが認められるのは父又は母に限られるということです。これまで実務上、祖父母の面接交流申立は認められていませんでした。これに対し、諸外国の例を引用して、祖父母についても面接交流を認めるべきとの立法論がありましたが、今回の改正は、その立場を採用しなかったわけです。祖父母については親が面接をする際に事実上同席して面会をするという従来の方法を踏襲することになります。